子どもの嘔吐・下痢
子どもに嘔吐・下痢などの症状が現れる原因としては、主にウイルス感染が考えられています。診察では原因、他に症状が現れていないかを確認して、それに合わせた治療を行います。
嘔吐・下痢の
受診のタイミング
(※こんな場合は
受診してください)
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飲み物を飲むとすぐに嘔吐してしまう
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ぐったりしている、機嫌が悪い
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泣いているが涙が出ていない
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皮膚、口の粘膜、唇に乾燥やその他の異常が確認できる
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排尿困難
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頭痛がする
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1日に何度も嘔吐、下痢の症状が見られる
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生後3カ月未満の子どもで38℃以上の発熱がある
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生後3カ月以上の子どもで39℃以上の発熱がある
など
以上のような症状の場合は早急に医師による診断・治療を受けてください。また、症状が軽い下痢や嘔吐の症状がある場合は、脱水症状を起こさないように水分をこまめに摂取しましょう。
子どもの
嘔吐・下痢の原因
子どもの嘔吐や下痢の原因として最も多いのはノロウイルスやロタウイルスです。特にロタウイルスは5歳までの子どもで入院が必要な急性胃腸炎の原因の半数とされており、5歳までにほぼすべての子どもが1回はかかると言われています。治療方法はノロウイルスもロタウイルスも同じです。理由としては、検査ではどちらのウイルスかを判断できなく、症状や発症時期、便の色などからウイルスを推定して、まとめて「ウイルス性胃腸炎」として治療することがあります。
ノロウイルス感染症
ノロウイルスの感染経路は大きく2つで、手や食べ物を介して口から感染する場合と、下記や井戸水を口にすることでウイルスが感染する場合があります。また、感染力が非常に高く、咳やくしゃみ、嘔吐物を介して空気感染することもあります。通年発症しますが、ピークは冬になります。1~2日の潜伏期間を経て、発症すると嘔吐や下痢、発熱が見られ、その後だんだんと治まって3日くらいで改善します。
ロタウイルス感染症
ロタウイルスは主に便の中のウイルスが手などを介して口に入って感染します。1~3日の潜伏期間を経て、症状が治まるまでには1~2週間ほどかかります。症状は主に、激しい下痢で白っぽい便が見られ、米のとぎ汁のようと表現されることもあります。他にも嘔吐や発熱が確認できます。ノロウイルスよりも発熱は長く、下痢も3~8日程度続きます。ピークは冬の終わりから春先です。
感染対策
ノロウイルスやロタウイルスは発症者の便や嘔吐物に含まれるウイルスが空気感染などで口に入ることで感染拡大していきます。直接触れないようにし、衛生的ではない場所には近づかないようにしましょう。嘔吐物や便は乾燥してしまうと、ホコリのように舞い上がるので、直接触れなくても感染することがあります。
嘔吐物の処理について
嘔吐物を処理するときは直接手に触れたり、空気中に舞い上がっているものを吸い込まないようにすることが重要です。使い捨ての手袋、マスク、エプロンを身に着け、嘔吐物が残らないように新聞紙やペーパータオルなどかぶせて全体を完全に覆うようにしましょう。また、拭きとれたように見えてもウイルスは残っているので漂白剤を使ってしっかり拭き取りましょう。
アルコール消毒が効きにくいタイプのウイルス
どちらのウイルスも消毒が効きにくいという特徴があります。乾いた場所でも10日以上生存できるので、薄めた塩素系漂白剤を使ってこまめにふき取るようにしましょう。漂白剤は金属に触れると腐食してしまうので、きっちり水拭きしてください。また、念のために薄めた塩素系漂白剤の余った分はすぐに廃棄しましょう。
手洗いについて
手洗いはもちろんですが、石鹸ではロウイルス、ロタウイルスは死滅しません。ただ、石鹸で洗う効用としては、ウイルスを表面に浮き上がらせられるので、水で洗い流すことができます。外から戻った後や食事前、トイレに行ったときはしっかり手洗いしましょう。他にも清潔に保たれているコップを使ってうがいすることも大切です。
予防接種について
ノロウイルスやロタウイルスは非常に強いウイルスで体内に入るだけで発症してしまいます。特にロタウイルスは5歳までにほぼすべての子どもがかかると言われているほど、感染力の高いものです。現在のところ、最も有効な手段としてはワクチン接種で、肺炎などの合併症にも効きます。
下痢・嘔吐の
よくある質問
通園や外出はいつから可能ですか?
ノロウイルスやロタウイルスを発症した場合、学校保健安全法に従って出校停止の措置が行なわれます。これは発生状況などを鑑みて検討されます。出席停止の指示がなくとも、症状がひどい場合は自宅で療養してください。また、下痢や嘔吐の症状は治まってもウイルスはしばらく便に混じっているので手洗いや消毒は1ヶ月程度こまめに行ってください。
吐いたり下痢したりしますがお腹の風邪と診断されました。鼻水も咳も出ていないのに風邪なのでしょうか?
風邪はウイルス性のものがほとんどなので上記のような症状のみの場合はお腹の風邪と判断されることが多いです。ただし、ロタウイルスやノロウイルスでも同様の症状が見られ、発熱を伴うことがしばしばあります。抗生剤が効かないことが多く、自然治癒を待つことになります。
昼間は元気でしたが、夜になって急に何度か嘔吐が見られました。この場合、夜間の救急病院を受診すべきですか?
吐き気は異物を出そうとする防御反応で、吐くことで体調が良くなることもあります。このような場合は食事を無理してとらせずに、水分を少しずつ与えてください。何も口にしていないのにもかかわらず、嘔吐が止まらなかったり、ぐったりしていたり、意識障害が起きている場合には夜間の救急病院を受診しましょう。
下痢したときの脱水症状を起こさないようにするためには何が必要ですか?
1日に10回以上水便が見られ、他にも喉が渇く、尿が出ない、ぐったりしているなどの様子が見られれば脱水症状を起こしている可能性があります。1回に20~50ccと少量ずつ水分を数回に分けて与えてください。お勧めは赤ちゃん用のイオン飲料です。
今朝から下痢を起こしているのですが、病院を受診する目安などありますか?
発熱、嘔吐、激しい腹痛、血便などが出て、脱水症状も確認できる場合は早急に受診してください。これらの症状が現れずに、機嫌がよく水分もとれている場合は様子を見ても良いですが、心配な場合は受診することをお勧めします。
下痢しているときは何を食べさせるのが良いでしょうか?
下痢の症状が起きている場合はお腹に負担がかからないように消化の良いものを食べさせてあげてください。量も少ない方が良いです。乳児はミルクだけをとらせずにおかゆも作ってあげてください。
下痢が出ていたのに下痢止めを出してもらえなかったのですが、なぜでしょうか?
下痢は嘔吐と同じく、異物を体外に出そうとする防御反応のひとつです。下痢の治療法で薬物療法もありますが、下痢止めは症状を和らげるのみで根本的な治療にはなりません。逆に服用することによって異物を排出することを遅らせてしまい、回復に時間がかかることもあります。消化の良いものを少量ずつでも食べることで自然回復を待つことが根本的な治療になります。